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機械設計学研究室

研究室史information

 機械設計学講座 設置の経緯
      [岡山大学工学部二十年史(昭和55年10月23日 発行)より抜粋]
 昭和47年4月1日 機械工学科に第5講座として,現在の機械設計学研究室の前身である機械設計学講座が新設された.次にその新設の経緯を略述する.
 本講座の新設は昭和41年4月の教授会における機械工学 第2学科の概算要求の協議時に起源する.
 すなわち,昭和35年 工学部創設時に設置された機械工学科は,4講座をもって編成されており,広範なる機械工学の領域を担当することは不可能で,教育・研究上多大の支障を来しており,このため昭和42年度以降5年間にわたり,機械工学 第2学科の概算要求を重点事項として取り上げ,その早期実現を期して努力したが,その夢を実現することができなかった.
 昭和46年の概算時を控え,学科としての新設の可能性を危ぐ中の10月末,文部省担当官を岡山に迎える機会に,学部長等による打診が行われ,学科新設の困難性を考え,2講座程度の講座増設を行い,ある時点で学科に振り替える方策も一考すべきではないかとの見解が述べられ,関係学科において種々の検討が行われた.
 文部省内には講座増によるよりは,学科新設の一本槍で初志を貫くべきではないかとの意見もあり,種々迷ったあげく,昭和47年度 概算は講座増の線で行く方針を決定した.
 昭和46年4月14日 開催の教官会議において,昭和47年度 概算要求事項が協議され,講座学科目の増設については,機械設計学,応用数学の2講座を順位を付けず要求し,文部省との折衝の時点で可能性のあるものを要求するとの方針を決定した.
 同年6月 工学部の概算要求書は事務局に提出され,概算説明を行うと共に,文部省に対しても数度にわたる陳情を行った.
 文部省に提出された機械設計学の概要は次の通りである.
 要求理由
(1) 近年における産業界の技術的発展は目覚ましいものがあり,その専門分野はますます拡大,かつ細分化している.
(2) 現在,一般的に機械工学面の基礎的専門分野は,材料力学,熱力学,流体力学,機械力学の俗にいう4力学を基幹とし,これに機械設計学,機械工作学に関する分野を加え,6分野で構成されている.
(3) なかでも機械工作学,機械設計学は最近における産業界の急速なる進展と規模の巨大化に伴う生産技術および自動化技術の開発とあいまって,その分野はますます拡大され,下記のごとく,その充実整備が急がれている.
(i) 機械製作学
本学は,設計された成果を実体化するいわゆる生産技術分野における理論的な体系づけを行う学問分野であり,特に機械工業界において主流をなす工作機械産業の進展と共に,その基礎学とし,また生産面において直接,生産技術に関与するものとして重視されるに至った.
(ii) 機械設計学
本学は,機械の構成および強度を理論的に解明する学問分野であるが,産業界の自動化と工業規模の巨大化に伴う機械の巨大化,多様化と共に安全性,経済性を加味した理論設計の分野が広大となり,機械設計学の責任範囲が極めて大となった.さらに技術の進展と共に,設計法,製図法の自動化技術の開発,実用化が急速に進み,これに対応する教育・研究の整備が要求される.
(4) しかるに本学の現状は機械力学と共に,この2分野を機械工作講座で担当しているが,上述のごとく,社会の要請とこれに対応するための学問分野の拡大は,講座内容の充実整備を強く要求され,これを機械工作講座で担当することは不可能な状態である.
 以上の理由により,機械工作講座を拡充改組し,機秋設計学,機械工作の2講座に分離,その講座内容を充実整備し,時代の要請に答えると共に教育研究の進展を計りたい.
 機械設計学要求定員
講座名 教(一)
教授 助教授 助手
機械設計学 1 1 1 3
 授業内容
授業科目 内 容 説  明
機械設計学第1 機械設計序論 機械設計を行うに必要な基礎的事項,問題及びその概要を説明する.
機械要素設計 機械の共通部分部品である軸,軸受,歯車などについてその設計法を講ずる.
機械設計学第2 型設計法概論 金属塑性加工における型の設計法についてその機器及び設計法について概説する.
自動設計法概論 自動設計法についてその機器及び設計法について概説する.
自動製図 自動設計法と並んで開発されつつある自動製図法を概説する.
生産設計法概論 経済性を考慮し,現場と直結したいわゆる生産設計法の基礎について概説.
機械設計演習第2 機械設計の演習問題及び機械部品の設計製図を行う.
機械力学 往復機械,回転機械の動力学及び機械振動について取り扱う.
機械工学演習第2 流体力学及び機械力学の演習問題を取り扱う.
機構学 機械を構成する要素の組立て方及びその要素の運動について述べ,続いて要素の合成体であるリンク機構,カム機構,ねじ,歯車機構などの運動伝達機構について講ずる.
機械設計演習第3 具体的な機械例の設計製図を行う.
 昭和46年8月 文部省と概算折衝中の事務局担当官より,教官構成3名中1名は振替[教(一)教務員の定員を教(一)教官の定員に変換すること]によらざるを得ないとの連絡を受け,教務員1を助手に振替することを了承した.
 これは昭和44年 行政機関の職員の定員に関する法律(総定員法と俗称)にもとづき,定員の総枠が定められ,新規需要の定員に対処するために第1次定員削減に引続き,昭和47年を初年度とする第2次定員削減が実施される情勢のため,定員増は厳しい査定を受けるようになったためである.
 昭和47年度 概算要求事項のうち,修士講座の増設として機械設計学は同年8月の文部省議を通過し,大蔵省に提出された.
 要求事項別表に計上された要求事項は次の通りであった.
 要求事項
大学名 学部名 学科名 講座名 教(一) 設備費
教授 助教授 助手 教務員
岡山 機械工学科 機械設計学 1 1 1 Δ1 2 千円
1,500
 昭和47年度 予算の概算閣議は年を越した昭和47年1月12日に開催され,予算原案を決定,1月28日 政府予算案として第68回 国会衆議院に提出され,4月28日の参議院可決を持って要求講座の新設が確定した.
(概算一口メモ)
 概算要求のため「機械設計学」の要求書を携え,高橋克明 工学部長,藤田公明 教授共々,幾度か文部省の会計課予算班,大学課等を訪ね,説明して歩いた.概算要求の説明説明の上手,下手は説明内容の良い悪いではない.多数の大学の説明を聞きながら「ああ,あの大学はあんな説明をしていたな!」と記憶に残る説明が最良のものだと,かつての上司某局長より聞かされていた.

「○○○のため,ぜひ新設して欲しい」
「教官は誰が担当するのか」
「藤田先生です.先生は国鉄研で新幹線の歯車担当の責任者でして・・・」
「そうですか.新幹線の設計者ですか・・・」
藤田先生はそれ以降 ”新幹線”で通るようになった.
「よろしく頼みます.」
「ああ,新幹線ですね.わかりました.」

・・・苦しい概算の思い出であった. (S55.5.1 岸本事務長 記)